北欧用語集

2020年9月19日

北欧の音楽シーンで頻繁に登場する用語を簡単に解説するページです。
表記は日本語→スウェーデン語→英語の順です。

ニッケルハルパ – Nyckelharpa – Key fiddle
 →スウェーデンの民族楽器。
 バイオリンのように弓で弾くにもかかわらず鍵盤がついているのが特徴。
 12本の共鳴弦によって残響感のある音色を持つ。

フィドル – Fiol – Fiddle
 →バイオリンの別名。
 楽器そのものは同じだが使われるシーンによって呼び分けられ、民族音楽では専らフィドルと呼ぶ。

ヴィオラ・ダ・モーレ – Viola d’amore
 →17~18世紀に用いられた、6本程度の演奏弦と共鳴弦を持つバイオリンに似た楽器。
 ただし北欧シーンの文脈では古楽器というよりは単に共鳴弦のついた4弦のバイオリンという意味合いで使われることが多い。

ハーディングフェーレ – Hardingfele – Hardanger fiddle
 →西ノルウェー、ハルダンゲル地方の民族楽器。
 構造はバイオリンに近いが装飾の施された見た目と専用のチューニング、5本の共鳴弦が特徴で、とりわけ重音を多用する奏法が中心となる。

トラッド – Trad.
 →トラディショナルミュージック=伝統音楽の略。
 フォークの文脈では大きく「伝統曲(作者不明)」、「近代曲(伝統曲として扱われているが作曲者の名前が残っている)」、「現代曲」の三つに分けられる。
 作曲者不明のトラッドの場合は地方名が併記されることが多い。近代曲は「トラッド」と書かれる場合と作曲者名で書かれる場合がある。

ポルスカ polska
 →スウェーデンの代表的な3拍子のダンス。
 polskaはスウェーデン語で「ポーランド風の」という意味だが、当時の諸国における「ポーランド風の」は「今どきの」という意味合いのものが多く、polskaもポーランド音楽との関連性は低い。
 polskaの中には様々なダンス/曲調のものが含まれる。
 北欧の伝統曲の多くはあえてつけられたタイトルが無い場合、曲の種類(≒ダンスの種類)がタイトルとなる。
 ポルスカの他にVals(ヴァルス)、Schottis(ショッティス)、marsch(マルシュ)などが挙げられる。

スペル spel – play
 →楽器を演奏することを意味する動詞。
 演奏家はspelman(スペルマン)。
 ニッケルハルパ奏者Eric Sahlströmの代表作「Spelmansglädje」はSpelman(演奏家) s(所有格) glädje(喜び、幸せ)という意味である。

スペルマンスラーグ Spelmanslag
 →Spelman(演奏家)のlag(組、団)から「演奏家集団」や「演奏家の集まり」と訳されることも。
 スウェーデン各地にあるSpelmanslagは「Orsa Spelmanslag」など町の名前を冠して、その地域の音楽を演奏している。
 演奏がCDになっていることもしばしば。

リクスペルマン – Riksspelman
 →スウェーデンの音楽家に与えられる称号の一つ。公認民族音楽家、と訳されることも。
 獲得には演奏のみならずその地域の文化や伝統への理解も求められるため○○地方のriksspelmanと言う肩書きになる。
 なおspelmanは演奏家 playerを指す単語。

エフテル efter – after
 →Polska efter 人名 のように曲名を示す際に用いられ、「○○さんにちなんだポルスカ」のように訳される。
 ニュアンスとしてはその人から習った、とか、その人がよく弾いていた、という意味合いで、作曲者が明確な場合は英語のofに相当するPolska av 人物のように書く。
 同じ人物がいくつも曲を伝えた場合は同名の「polska efter 人物」が複数存在することとなる。

フロン från – from
 →英語のfromに相当する単語でpolska från 地名 のように用いる。
  例えば polska från Boda, polska från smålandなど、曲名の無い物についてはどの地方の○○、という呼び方をする。
 (当然同じ地域の同じダンスは1曲では無いので同名の曲が複数存在することとなる) 
 「曲の種類 efter」のあとは人名、「曲の種類 från」のあとは地名。

ブルド – Brud – bride
 →スウェーデン語で結婚を指す言葉。大抵は曲の形式とくっついて1語を成す。(例:Brudpolska, Brudvals など)
 Brudmarschは文字通り結婚行進曲である。
 興味深い点としては結婚を冠する曲に、クラシック音楽的には「短調」に該当する曲が非常に多いと言うこと。
 「短調=暗い」という日本の指導法にも問題があるが、それ以上にクラシック的な感覚ではない感覚が彼らに残っている証拠ではないかと考える。
 短調ではあるが、暗いというよりきれいな、美しい曲と思っているのではないかと。

アンドラステンマ andrastämma – second voice
 →スウェーデン音楽において、メロディに対してハモりや伴奏をするパートのことを指す。日本の奏者は「アンドラ」と略す人と「ステンマ」と略す人がいる。
 1周目はユニゾンでメロディを弾いた後2周目から誰かがアンドラに回るような展開はよく耳にする。
 お決まりのアンドラがある曲もあれば即興でアンドラをつけることも少なくない。
 クラシック的に訳すなら第2声部であるように、メロディに寄り添ったりリズムを出したり、オブリガートやバッキングとはまた違った、広義で自由度の高い言葉である。

アコーディオン – Dragspel – Accordion
 →アコーディオンは持ち運びのできる鍵盤楽器かつフィドルとの相性も良いことからダンスの伴奏楽器として非常に人気であった。
 ちなみにニッケルハルパはアコーディオンの人気の陰で演奏者が激減した歴史を持つ。
 なおDurspel(デューシュピェル)は スウェーデン語でダイアトニック式アコーディオン(押し引き異音式アコーディオン)を指す。
 ブックレットを見ているとよく出会う。

そもそも「北欧」って?

「北欧」は、文化・歴史的な共通点でくくられた、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、バルト三国(エストニア、ラトヴィア、リトアニア)、ブリテン諸島、アイスランドを含む地域の総称です。

とスカンディナヴィア半島よりも広い地域が該当します。

ただし、しばしば問題になるのが「Northern Europe」「Nordic」「Scandinavian」のいずれも日本語では「北欧」と訳されることがあり、

北欧と言ってもスカンディナヴィア(ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランド)のみを指していることもあります。
※スカンディナヴィアの定義も時と場合により、最も狭義の場合はフィンランドは含めず、広義の場合はフィンランドとアイスランドが含まれます。


音楽的文脈においてブリテン諸島(アイルランドやイギリス)は確実に別物でしょう。
また、アイスランドは残っている曲が少ないため、包含されていてもあまり話題にはならないです。
バルト三国は近年注目を集めていて、音楽的にはスカンディナヴィアに近い部分と大陸が混ざったような形式なので「北欧」に含める人と含めない人がいます。


レソノサウンドではスカンディナヴィア音楽を中心に、バルト三国も含んだ地域の音楽を「北欧音楽」として紹介しています。

Posted by resono-sound