ノルウェーの民俗楽器、ハーディングフェーレとは?

 華やかな装飾が特徴のこちらの楽器はヴァイオリンにも似た形をしているものの似て非なる存在、ノルウェーの民俗楽器「ハーディングフェーレ(Hardingfele)」です。
 西ノルウェーのハルダンゲル地方に伝わる伝統楽器で、名前の前半、Hardingはハルダンゲルの、feleはfiddleを表し、ハルダンゲル地方のフィドルという意味合いで名付けられています。英語だとそのままHardanger Fiddleとなります。

made by Keisuke Hara

 現存する最古の楽器は1651年のものですが、その時点でデザインが出来上がっていることやハーディングフェーレ用と思われるケースにより古い年号が刻まれていることなどからそれ以前にも弾かれていたと考えられている、歴史のある楽器です。現在でも製作家と多くの奏者によってその伝統は引き継がれています。
 指板は貝や骨などが埋め込まれており、ヘッド部分にはドラゴンやライオンのようなモチーフが彫刻され、楽器の表板や裏板にはロージングという技法を用いた模様が描き込まれていることから見た目にも華やかな、芸術品のような楽器です。民俗楽器、恐るべし。

 フィドルとの大きな違いは二つ。
 
ガット弦」であることと共鳴弦」の存在、が挙げられます。

Kantor.JH, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=38290947による

 クラシックのヴァイオリンもかつてはガット弦であったものの、音量の確保やチューニングの安定性などの要因から現在では金属弦が主流になっています。しかしハーディングフェーレは現在でもメロディ弦に専用のガット弦を使用しているため、フィドルが弾ける人も触ってみると感覚が違うと思うのではないでしょうか。ハーディングフェーレの曲はガット弦の豊かな音色あってこそだと感じるほど大きな要素の一つです。
 メロディ弦は4本で、チューニングには20通り以上ものバリエーションがあると言いますが、スタンダードなものでは下からH-E-H-Fisというものが挙げられます。それらの弦とヴァイオリンよりもずっと平らな駒を使って重音(二つ以上の音を同時に鳴らす奏法)を多用する特徴的な奏法が成り立っています。

 共鳴弦は弓で弾かれることはなく、演奏したメロディ弦の音に対応する共鳴弦が共振することで音に豊かさや残響感を与える効果を持ちます。共鳴弦を持つ楽器はハーディングフェーレに限らずとも、ヨーロッパで古くから弾かれているヴィオラ・ダ・モーレや、スウェーデンの民俗楽器ニッケルハルパ、インドのサーランギなど多数存在しています。
 ハーディングフェーレは写真のように駒が二段構造になっていて下の段に共鳴弦を張ることで演奏に干渉しないようになっています。
 共鳴弦の数は4本から5本が一般的です。

では実際に演奏を聴いてみましょう!

 このように、きらびやかで包容力のある音色が特徴の楽器です。
 伝統的な演奏ではハーディングフェーレのソロでダンスの伴奏をすることもありますし、現在ではバンドのスタイルで活躍している奏者もいます。

 また、日本でもハーディングフェーレ製作家・演奏家ともに活躍しておられ、ハーディングフェーレそのものだけでなくその背景にある現地の人々の感覚も含めた文化を日本の人々に伝えるために多大なる貢献をしていらっしゃいます。
 製作家 原圭佑さん

 演奏家 樫原聡子さん野間友貴さん酒井絵美さん etc…

 現在、当店では店内でのハーディングフェーレのレンタルを行っている他、野間友貴さんによるハーディングフェーレのレッスンを定期開催しております。レンタル用の楽器は原圭佑さんがノルウェーのコンテストで受賞した作品という盤石の布陣です。
 この記事を読んでご興味が湧いた方はぜひ当店で体験してみてください!

 レッスンの開講状況はレソノサウンドのイベントカレンダーおよびFacebookページからご覧いただけます。

 酒井絵美さんが2020年12月に発売された、ハーディングフェーレについての大変わかりやすい解説が載っているブックレットとノルウェーの曲の楽譜、興味深いお話、そして素敵な演奏が詰まったCDセットになった「VETLA JENTO MI」は酒井さんのHPから購入いただけます。(商品ページ
 こちら聴かせていただきましたが観賞はもちろんのこと入門書としても非常におすすめです!

 

 ということで今回はハーディングフェーレという楽器について簡単にご紹介致しました!
 クラシック作曲家のグリーグとの関係性などまだまだ話すことは尽きないのですが…ひとまずはこのあたりで終わりにしたいと思います。
 少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。
 ご覧くださいましてありがとうございました!

Posted by resono-sound