北欧マンドーラについて

2020年7月5日

 北欧音楽に用いられている楽器の一つにマンドーラ、と呼ばれる楽器があるが非常に曖昧な部分の多い存在なので、自分の勉強も兼ねてここにまとめていこうと思う。
 動画はDreamers’ Circusでも有名な奏者Ale Carrによるマンドーラの演奏。彼はこの楽器をシターンと呼んでいる。

 mandola(マンドーラ)、Swedish mandola(スウェディッシュマンドーラ)、Nordic mandola(北欧マンドーラ)、cittern(シターン)はいずれも北欧音楽に使われる似た形状を持った楽器である。製作家が何と呼んでいるか次第で名前が変わるので著しく大きな違いは無いと思って構わない。
 逆に、様々なバリエーションが存在することにはなるが、少なくともリュート属の古楽器「マンドーラ mandora」(画像左)や、古楽器のシターン(画像右)とは名前こそ同じものの、この文脈においては別の楽器となる。
 マンドリン属の楽器「マンドラ mandola 」(画像下)も同じ綴りだがまた別物である。ややこしくて申し訳ない。
 ここでは北欧音楽に使われる楽器を指して単にマンドーラと呼称することにする。

 マンドーラの歴史は非常に新しい。

 というのも「誰がこういった楽器を作り、スウェーデン音楽に取り入れたのか」がはっきりしていて、それはスウェーデンのフォークバンドFrifotでも有名なあらゆる楽器を演奏するミュージシャン、Ale Möllerである。

 次の動画の彼率いるAle Möller Bandはギリシャ・セネガル・スウェーデンの音楽をミックスさせたバンドだ。彼は様々な音楽に興味を持って吸収している偉大なミュージシャンだが、ギリシャ音楽に傾倒している間、彼はギリシャの伝統楽器であるブズーキ(画像左)と出会った。グリークブズーキは複弦3コースを基本の形としている。ボディは洋梨を半分に割ったような形状だ。彼はこの楽器をスウェーデン音楽に取り入れようと、楽器製作家Christer Ådinと共同で80年代にマンドーラを開発した。このときには既にブズーキはアイルランドにも持ち込まれアイリッシュブズーキ(画像右)と呼ばれる裏板がフラットな4コースの楽器に形を変えている。マンドーラのボディの形状などは恐らくアイリッシュブズーキを参考にしただろう。

 マンドーラの基本的な構造は、アイリッシュブズーキと似た滴形でフラットバックのボディにナイロン弦の複弦5コース、チューニングは下からCGDAEとヴァイオリン(あるいはマンドリン)のオクターブ下かつ5弦目に低音のCを足したものになっている。
 低音弦2本はオクターブで張られていることが多い。加えて、ピンポイントカポタストという特定の開放弦の音程を変えるための器具をつけるための穴が空いている物もあり、それらを駆使しながらAAEAEやDADAE、DGDADなど様々なスタイルに合わせたチューニングで演奏される。
 次の動画の楽器は、4コース5コース目を3度下までドロップできるような構造になっている。
 オーダー次第では、微分音のフレットをつけてもらうこともできる。実はスウェーデン音楽でもしばしば微分音が登場する。フィドルがフォークミュージックの中心だったためであろう。だから、かどうかはさておき、スウェーデン音楽にギターやマンドリンなどの撥弦楽器が取り入れられたことすら実は比較的最近の出来事になる。それについては別の機会にお話しするとしよう。

マンドーラの製作家は何人かいるが
 Ale Carr(Dreamers’ Circus)
 Ale Möller (Frifot)
が使用しているChrister Ådin(公式サイト)。
 Roger Tallroth (Väsen)
 Lasse Sörlin (Nordman)
が使用しているOla Söderström(公式サイト)。
イギリスのStefan Sobel (公式サイト)などが挙げられる。

 今回は北欧音楽で使われる楽器、マンドーラについての簡単な解説をしてみた。
 日本語で解説しているページがあまり無かったので、少しでもお役に立てればと願う。
 それではまた次のコラムで。
 最後の動画はとりわけ素晴らしいマンドーラのソロである。

参考文献
https://silkwoodmusic.wordpress.com/2010/03/25/the-nordic-mandola-its-not-a-banjo/

Posted by resono-sound